Peach blossom(家庭療育ブログ)

【家庭療育】梅子さんと料理

🌸桜🌸です。

今回は、梅子さんと料理について書いていきたいと思います。

梅子さんは、台所に立つことがありましたか?

🌸桜🌸

はい。
療育の一環で料理をしていました。

カレーに始まり、お好み焼き、餃子、味噌汁、ご飯を炊くなどなど…

  • 野菜を用意して洗う
  • 皮むき
  • 火を使う
  • 調味料を合わせる
  • 調理器具の洗いと片付け
  • 盛り付け
  • 家族に提供する

全ての工程をレシピを見ながら作っていました。

料理は、J子先生が療育をする上で必要な課題の1つにしていました。

料理はあらゆる療育の課題の頂点だと考えています。
そのことは「【家庭療育 9】料理をなぜ教えるのか・療育まとめ」に書いたのでご参考にしてください。

【家庭療育 9】料理をなぜ教えるのか・療育まとめ
療育で習った課題学習「数字・文字・体力・お金の知識」などが料理の中に全て含まれています。そして、料理を通して、自尊心も高くなり、他者のためにも働ける人へと成長します。

重度自閉症の梅子さんと料理について、どんな状況になったのかを書いていきたいと思います。

包丁と梅子さん

指示の通らない幼少期から包丁を持たせていたのですか?

🌸桜🌸

はい。

梅子さんが私の背丈より小さいときから梅子さんの後ろに回って全介助で包丁の使い方を教えました。

梅子さんが小学校1年の時、ある出来事が起きました。
梅子さんが私の目を盗んで、キッチンで包丁を持ち出し、手が血だらけになってしまいました。
怪我は、非常に軽いものでしたが、傷だらけになってしまいました。
最初は、驚きましたが、何をしたかったのかをよく見ると、学校から持って帰ってきたさつま芋の皮を剥こうとして上手くいかず、手をたくさん切ってしまった…という事でした。
さつま芋を使って何かを作りたかったようです。

私は、ここは、叱る場面ではないと思い、黙って手の消毒をしてから、「一緒におやつでも作ろう」と言って、焼き芋を作らせました。
その過程で「手、痛かったね〜!包丁の使い方、間違えたら痛いでしょ!イタタタ」と言いました。
梅子さんは、その様子を経験してから、私の許可なくいっさいキッチンから包丁を勝手に持ち出す事がなくなりました。

重度発達障害者に包丁を持たせること自体、否定的な意見もあるかと思います。
発達障害のお子さんと向き合うとき「危険」が伴うことは多々あります。
しかし、同じくらい希望もあるので、教えていくこと、経験していくことでその「危険」を回避し、自分の知識にしていくことが出来ます。
仮に梅子さんに幼少期から包丁を教えていなければ…と考える方が、私には怖かったと思います。

重度発達障害のお子さんも料理を楽しめるようになるために幼少期から料理の練習をさせてあげて欲しいと思います。

数概念と文字

梅子さんは料理を作るとき、どうやって作っているのですか?

🌸桜🌸

梅子さんにカレーなどを作ってもらうために野菜や肉、調味料などを用意してもらうのですが、材料は、全て文字と数字で成り立っています。


文字や数字が理解できていないと、何を書いているのだろうか?と本人は、なります。
文字に書かれた野菜を取り出し、数字に合わせて分量を用意する…理解していないと料理として成り立たない事が始まります。

療育で文字や数字を教えるのは、教えることで健常者にする、近づけるのではなく、分かりづらい世界で暮らしているから少しでも分かりやすくする…それが療育です。
レシピを読んで作ることは、好きなものが自分で作れて食べられることです。
障害者にとって素敵なことだと思います。

物事には、全て目には見えない「ルール」が存在しています。
野球、サッカーやバスケット、トランプなど、全てそれぞれにルールがあります。
健常者ならすぐに理解できるルールであっても、発達障害者は、全くそのルールが理解できません。
仮にサッカーのルールを理解できたとしても、そのルールを野球に当てはめようとするのが発達障害の梅子さんの分かりづらさです。😓
その度に1つ1つ丁寧に教えてやらなければいけません。
その「ルール」を教える過程で必要になるのが、文字であり、数字なんです。
だからこそ、重度発達障害者には、勉強が欠かせないということなんですね。

火を知る

料理には火を使いますが、梅子さんも使っていたのでしょうか?

🌸桜🌸

はい。

使っています。

現在、我が家は、オール電化なのですが、以前は、ガスでした。
そのガスの時代から梅子さんに料理をさせていました。

梅子さんは、怖がりの正確です。
そのため、天ぷらをあげる時など、衣をつけた食材を油の上空から高い位置で放り込んで、少し火傷した経験がありました。
それ以来、火を正しく怖がってくれるようになりました。
怖がりすぎて、鍋肌からもれる火を見ては、すぐにトロ火に調節してしまい、なかなかお湯が沸かない…ということがあります。笑
梅子さんは幼少期から料理を通して火を正しく怖がるので、火遊びをしたことがありませんでした。

梅子さんが小学校6年の時、転校した支援学校で火遊びが原因で亡くなった障害のお子さんがいました。
発達障害のお子さんでふと火に興味をもち、遊んでしまう子供さんがいます。
火をその子の周りから取り除く方法がとられますが、そうならないためにも火を正しく恐れるための料理の授業などが必要なのではないかと考えます。
知り合いのお子さんで花火などをしているとき、火の先端をつかんでしまい、指先を火傷したお子さんもおいでました。
その後、一切、火に手を近づけることがなくなったと保護者の方から聞いた事があります。

火に関しては、「正しく恐れる」事を教えていくことが大切だと思いました。

指示を通す

料理を一緒にさせても、指示通り動いてくれる気がしません。

🌸桜🌸

料理は決して指示なしでは、作り上げることができません。
指示を通すことのできる絶好の機会です。
指示なしではできないことは子供が1番分かっています。

指示を通せる絶好の機会ですので積極的に取り組んでください。

火を正しく恐れることを教えながら、食材に火を通すことで、食材の変化を教えていきました。
発達障害のお子さんで料理をした事がないお子さんが冷蔵庫の生肉を食べてしまったことがありました。
お腹すいていたのだと思うのですが、食材が火を通すことで変化することが分からなかったので、誤って口に入れてしまったのだと思います。
生で口に入れて危ない食材もあるので、料理を教えることが必要だと思った出来事でした。

お子さんによっては親の許可なくキッチンを使って火事になりそうになったというお話もありました。
私は、料理を作るというのは、親の指示に従わせるということを料理を通して教えていくことが必要だと考えています。
いわゆる料理って、出来る人に教えてもらわないとうまくできないものです。
我流でいきなりすごい料理なんて無理ですよね。

正直、健常者でも難しいですが…笑

料理の基礎もない重度発達障害の人に美味しいものを作ってもらうためには、料理の出来る人の指示をしっかり聞いて作り上げていくことが大切です。

指示を通して教えていく過程で、そのお子さんがある程度、料理が1人で出来るようになると、キッチンを使うときは、「許可をとる」ということも教えることが大切なのかと考えました。
以前、「【家庭療育】早期療育について解説」の記事にも書きましたが「人から学ぶこと」を知ることが料理にもつながってきます。

【家庭療育】早期療育について解説
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料理を通して指示の聞ける関係を結ぶ前に、しっかり机上の課題学習やマラソン、山登りを通して人の指示を聞いて学ぶ姿勢を身につけてください。

家族に提供するって?

うちの子、偏食がきついので料理させても食べられません。

🌸桜🌸

料理は、自分が食べるだけでなく家族も食べるものです。
自分が仮に食べなくても、家族の食べる料理を作ってもらいましょう。

自分で苦労して作った料理を他者に振る舞うこと…
他者の事を思う気持ちが薄い発達障害者にとって、他者に対して意識が向きます。

梅子さんも最初、何時間もかけて作ったカレーを主人や杏子さんに食べてもらい、「美味しい!」と言って家族の食べている様子をじっと見つめていました。
自分が食べずに家族が食べている姿を見つめている重度発達障害者の姿って、不思議な光景に見えました。

他者への共感が薄い重度発達障害者の心をどう育てていくのかは、向き合い方によるのだと思いました。
何度も梅子さんに料理を作ってもらい、家族の食べている姿を見て楽しむようになっていたことを思うと、料理って本当に大切だと思いました。

その後、梅子さんは、料理を作ることに対して積極的にしてくれるようになりました。
他者に喜んでもらえることが嬉しい…と感じれるようになったことが1番の大きな収穫でした。

偏食の手助け

梅子さんは、比較的偏食は少ない人でしたが、料理をすることで、なんでも食べてくれるようになりました。

しかし、この食材って一体、何?と思ったら食べられない発達障害児もたくさんいます。
「認知」の問題から起因している偏食がたくさんあるようです。
料理を子供にさせたり、農作業をさせて収穫させることで野菜を食べられるようになった子供の話を聞きます。
子供は、得体のしれないものは口にしたくない!というのが大半の理由だと思います。

今の時代、空腹を知っているお子さんが少なくなっているのも偏食の原因の1つかと思います。
空腹を感じていることがかわいそう…と思って、間食をたくさんとっている発達障害のお子さんがいます。
お腹が空くと機嫌が悪くなるからお菓子を与えている…という方もおいでます。
梅子さんの周りには、肥満が原因で中学校から高校にかけて、糖尿病を発症し、インシュリンを打っている発達障害のお子さんもいました。

まずは、しっかり運動し、空腹をしっかり感じさせてから食事を食べてもらうことが大切だと思っています。
このマインドは、沢庵和尚のお話でも有名なお話ですので、ご参考にしてください。

たくあん漬け | 沢庵和尚ゆかりの寺、宗鏡寺(沢庵寺)公式ホームページ
たくあん漬けは沢庵和尚由来といわれております。宗鏡寺(沢庵寺)では毎年、自寺で漬けた「沢庵寺のたくあん漬け」を販売しております。

今回、料理にフォーカスしましたが、最終、お子さんと楽しく料理のできる関係が構築できたら、互いに喋れなくても、料理を通してコミュニケーションが取れます
お子さんが小さいときから料理に挑戦してくださいね。

  • 料理を通して偏食を改善させていく
  • 料理を通して喋れない重度発達障害の子供と同じ目的に進んでいける
  • 料理を通して他者に対する意識が向くようになる
  • 料理を通して、数や文字を理解していくことができる
  • 料理を通して、他者の協力がないとできないことを学べる
  • 料理を通して、火を正しく恐れることができる

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。
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