Peach blossom(家庭療育ブログ)

【家庭療育】重度発達障害者の余暇活動3選について解説

🌸桜🌸です。

今回は、梅子さんが幼少期から今現在の成人まで習っている習い事について書きたいと思います。

重度発達障害の子供に健常児のような習い事は必要ですか?

🌸桜🌸

はい。
必要です。
生きる力に直結する習い事や人生の楽しみになるような習い事は必要だと思っています。
何より社会性を身につけることができます。

重度発達障害児は、集団生活が非常に苦手です。
同じ歳のお子さんが遊んでいる公園や幼稚園などは、集団に馴染めず、すぐに抜け出してしまいます。
幼少期は、小集団の中で「集団でいる練習」を県内の療育センターで積みました。

梅子さんの幼少期は、措置から支援制度に切り替わりの転換期でした。
今のような「放課後デイ」などもなく、子供の福祉制度が整っていなかった時期でした。
そのため、療育センターから帰ってきても、正直、することがなく、しゃべらない子供と人のいない公園に出かけるくらいしかなかった…そんな時代でした。

当時の私は、教育するのに適した年齢の子供を放置するのはもったいないと思ったので、何か習わせたいと考えるようになりました。

とはいえ、明らかにコミュニケーションができず、言われたこともできない梅子さんに健常のお子さんに混じって学ぶなどは無理だと思いました。

そのような時に開拓してみた習い事を紹介します。

  • 絵画教室(梅子さん3歳から開始)
  • 水泳(梅子さん小学校高学年から開始)
  • 書道(梅子さん中学2年から開始)
この3つの習い事は23歳になった現在も続いています。
そして習っていて良かった!!!と思っている3つの習い事でもありますので、ご参考にしてください。

絵画教室

重度発達障害者専用の絵画教室があったのですか?

🌸桜🌸

いえ、ありません。

私が絵画教室の先生に頼んで作ってもらったのがきっかけでした。

重度発達障害の子供に絵を教えて何になるのでしょうか?

🌸桜🌸

絵を通して自分の思いを表現できるようになります。
文字が書けなくても、絵を子供に描かすことで、その子のメンタルがわかったり、分かりづらさを理解することができます。

 
梅子さんには2歳年上の姉・杏子がいます。
杏子は、健常児で現在は、社会人として働いています。
杏子は、絵を描くのが好きで地域のコミセンで子供のための絵画教室をしている先生がいらっしゃったので、その先生の所に通ってました。
先生と私が話するようになり、梅子さんの障害の話をしました。
そこで折り入ってご相談したいことがあります…と私から切り出しました。
障害児専用の絵画教室を開催してほしい…との事をお願いしました。
先生は、もちろん、「発達障害」など全く分からない方でした。
正直、後から考えると無謀そのものだと思いました。🤣
当時、先生に「障害児に行き場所がない」という事をお話しました。
先生もかなり悩まれましたが、OKを出していただき、当時通っていた梅子さんの療育センターのお母さん方に声をかけて、手探りで障害児だけの絵画教室をはじめました。

発達障害児5人ほど集まったのですが、どの子も座ることもできず、走り回ったり、隠れたり、教室から抜け出す子供さんがいたり、梅子さんは、時計が怖くて部屋に中々入れませんでした。
大泣きの梅子さんを抱えて、ようやく座らせるまでに時間がかかったりとどの子も保護者の方と悪戦苦闘する状態でした。

先生も当時、「これ絵をかけるまでになるのだろうか?大丈夫なのか?」と疑問を持たれたそうです。🤣
どの子も次第に何をするべき場所なのかを知り、座ってくれるようになり、絵の具やクレヨンを使って絵を描くようになりました。
もちろん、何ヶ月などという短いスパンではなく、何年もかかりました。

そのような中、子供によっては、真っ黒に画用紙を塗りつぶす子供がいました。
その子は、大泣きで怒りながら描いていたのを今でも思い出します。
学校でも家庭でも荒れていたようでした。

また別の子供は、先生の出したテーマ「例えば、車」とホワイトボードに書けば、画用紙に「車」の文字をたくさん書く子供がいました。

水彩絵具を使ったことのない子供ばかりなので、絵の具をパレットに出したら、全て出す子供もいました。
どのくらい出したらいいのか分からなかったようです。
その絵の具を筆につけると水にとかず、そのまま画用紙に塗ってしまう状態でした。

筆の使い方もわからないので、力任せに画用紙に塗り続ける子供もいました。
そのため、細い箇所も塗りつぶしてしまい、にじんでしまうことがありました。

力任せにぬり、画用紙に穴を開けてしまう子供もいました。

梅子さんの場合、幼少期は時計が怖くて、絵を描くどころではありませんでした。
部屋に入ることも出来ず、廊下で大泣きしていました。
絵を描くことを教えたかったので、泣き叫ぶ梅子さんを抱きかかえて部屋に入って全介助で描かせていきました。
先生がテーマをホワイトボードに書いてもらっても何を描かせたいのかが梅子さんには、分からず、困っていました。
絵を描くというより、子供と戦いのような習い事に心が折れそうになりながらも、いつかは落ち着いて描いて欲しい!という思いで向き合っていました。
習い事をしながら並行して療育を取り組んでいたので、年をおうごとに次第に落ち着いてきて、小学校高学年には、座って描けるようになってきました。

絵に関しては、人の描き方が分からず家で教えたりもしましたが、次第に自分で人の形を描き始めました。
しかし、体の認識が弱いところは、絵にすると曖昧さがあり顕著に分かりづらさが出ていました。
分かりづらさが絵に現れてくるのだと梅子さんから学びました。

絵画教室では、遠足や旅行、農作業の経験などを通して後日、絵にする事を課題として下さいました。
旅行に家族では行けないという方も絵画教室のみんなで行くことで、旅行先でどのように子供をサポートすればいいのか先輩保護者の方にアドバイスを受けながら、参加している方もおいでました。
旅行の機会に療育手帳の制度を活用し、公共機関の割引なども教わっていました

絵画教室作品展も何度か開催され、新聞にも掲載されました。
絵画教室の人数も増え、今では、新しい方も参加してくださり、保護者の情報交換の場にもなっています。

最近の絵画教室作品展は、2019年12月でしたので、コロナの影響も受けず、無事開催できました。
ひとえに、絵画の先生のご尽力によりものが1番大きく、本当に感謝の気持ちしかありません。

発達障害という何も分からない重度障害児を受け入れ、社会に啓発してくださるために惜しみない愛をいただけたこと、深く感謝しております。

  • 絵を描かすことで子供のメンタルが見える
  • 絵を通して分かりづらい部分がどこなのか見えてくる
  • 経験を絵にすることができるようになった
  • 表現が苦手な子供が絵を描くことで自分の内面を表現するようになった

水泳(顔つけ)

発達障害の子供に水泳を習わせることは必要ですか?

🌸桜🌸

はい。
余暇活動には必要な習い事だと思っています。

梅子さんは、朝のマラソンを小学校から取り組みましたが、他にはスポーツはしていませんでした。
梅子さんは、体の使い方が下手くそで今でも運動は苦手です。
水泳をするようJ子先生からアドバイスを受け、小学校4年から水泳をはじめました。

県内の障害者専用の施設の水泳教室に連れて行きましたが、大泣きで何も出来ませんでした。
怖がって、しがみつくだけで終わりました。
これではいけない!と思って、家で顔をつけるところから始めました。

5月、家のお風呂で水中メガネを水面につけて、ゆらゆら動くタオルやラミネートされた絵カードの絵が何なのかを当てるゲームをしたりしました。


梅子さんは、水中メガネを覗き込み、不思議そうに見てくれるようになりました。
水中メガネを顔にくっつけ、水面から少しずつ水中にメガネをつけて沈めていきました。
梅子さんが水中メガネを顔に装着したまま、水面ギリギリまで顔をつける事ができるようになりました。
次に、湯船の底に絵カードなどを落として水中メガネをつけたまま、拾ってもらうようにしました。
梅子さんは、絵カードの位置をしっかり確認するため、水中にまで顔をつけて絵カードを拾ってくれるようになりました。
水中メガネを競泳用のメガネに変更しました。
競泳用のメガネを装着したまま、湯船の底に落ちている絵カードを拾ってもらうようにしました。


最初、梅子さんは少し怖がっていました。
しばらくして、顔をつけるように指示をすると、息を止めて顔をつけて絵カードを1枚、拾う事ができました
家の湯船では、顔を付けれるようになりました。
しかし、環境が変われば、何もかもできなくなるのが発達障害者です。😓
プールになると顔をつけることができませんでした。

そこでプールではなく、その年の夏に川に連れて行き、顔をつける指示をしました。
梅子さんは、怖がって大泣きしながら、顔をつけようとはしませんでした。
私も譲る気が全くなかったので1時間ほど、顔をつける指示をしました。
梅子さんは1時間で私の指示に折れて、岩場のそばで競泳用の水中メガネをかけて嫌がりながらも顔をつけました。
顔を一瞬つけて、顔をあげて私の方をみて驚いたような顔をしていました。
私は、ニヤニヤして「見た?笑」と聞くと「もう1回、顔をつけて」と伝えました。
梅子さんは、嬉しそうに顔をつけては、夢中に岩場を覗いていました。🤣
その後は、主人が「そろそろ帰ろうか」と声をかけるまで夢中に遊んでいました。
川の世界を覗き見したことで、びっくりしたようでした。
魚がいる、藻がゆらゆら見える…どれもが新鮮で今まで生きてきた世界とは違っていました。
梅子さんは、夢中になっていたようでした。
後日、プールでも顔をつけられるようになり、結果、数年後、クロールができるまでになりました。

現在は、毎週1回コーチのつく障害者専用の水泳教室で平泳ぎにチャレンジしています。

  • 水泳をすることで全身運動ができ、ストレス発散になる
  • 顔をつけられることで川の中の世界を知る
  • 大人になっても続けられる
  • 水の好きな発達障害の子供の気持ちを満たすことができる
  • 言葉が通じなくても、段階を踏めば顔をつけられるようになる

書道

発達障害の子供に書道って必要ですか?

🌸桜🌸

はい。
必要です。
文字は綺麗に書けることは、他者から軽く扱われないことにつながります。

でも梅子さんは、仕事帰りに書道に通っています。
発達障害者は、書字困難をもっています。
梅子さんも書字困難をもっていたので、リズムに合わせて文字を書く練習を積んできました。

梅子さんの小学校編 1(山登り・タイル・書字困難)

梅子さんの小学校編 10(トイレットペーパー・歯磨き練習)
🌸桜🌸です。 今回は、課題学習から少し離れて、身辺自立についてお話ししたいと思います。 梅子さんは、小学校に入学しても引き続き、身辺自立に取り組んでいました。 トイレに行きたい時は、「トイレ」と訴えてくれるので助かるようになったのですが、後

上記の画像は、漢字「目」の練習です。

下記の画像は、漢字「頭」です。

指揮者がタクトを振るように、クレヨンを持たせて動きで文字を書くことを教えました。
しかし、文字はかけても「綺麗な文字」や「他者でも読める文字」は書けませんでした。
罫線を気にせず大きな文字を書いたり、はねやとめはらい、横線の右上がりなどがわかっていませんでした。

横線の右上がり、はらい、はね、とめ等を教わるため、書道が必要だとJ子先生からアドバイスを受けました。

重度発達障害児に書字困難だけでも難しいのに、その上、綺麗な文字まで要求する気なのですか?

🌸桜🌸

文字は、書けたらいいだけではありません。
相手に思いを伝える手段でもあります。
そして、相手の思いをくみとる手段でもあります。
そのため、読めない文字では、上手く伝わりません。


書字困難を超えるだけでも、努力と時間を要しました。
梅子さんに教えていたのが夏でしたが、部屋の冷房ガンガンにかけても、私と梅子さんの汗が頭から滝のように流れて、クレヨンの上にポタポタと垂れてきました。
努力してもなおまだ上を目指さなければいけないのか…と思いました。

でも、文字ってなんで書くのでしょうか?
文字には意味が込められています。

例えば、「危険」とあれば、その意味を理解し、危ないことから命を守ることが出来ます。
しかし、何を書いているのか分からなければ命を危険に晒すことになります。

自分が思いを込めて書いた文字が読みづらければ、相手に伝わりません。
相手に想いを伝えるということは、いかに大変かということを文字1つからも分かってきます。
文字は、書ければいいのではなく、書き手も読み手も読める文字を書くことが重要になってきます。

人間って不思議な生き物で、重度障害者の梅子さんが罫線内に収まるように名前をスラスラ漢字で書いたら、驚かれて普通に人間として接してくれたり、褒めて認めてくれるようになりました。

昔、有名な方が事件を起こして、その後の直筆の謝罪文に一斉に批判が集まりました。
文章は、適切な内容だったにも関わらず、文字の汚さから批判が集まってしまった事がありました。
文字は、人格を現す…と思った出来事でした。

障害者だから汚い文字は仕方がない…と思うと、その障害者に対する社会の扱いは、人格を無視した扱いを受けることになります。
重度の発達障害者でも見た目に反して綺麗な文字を書くことは、適切に社会が扱ってくれます。

しかし、障害者専用の書道という教室は、私の地域にはなかったので、中々、始められずにいました。
梅子さんが小学校5年の転機を迎えて以降、人から学ぶ姿勢が身についたことで遅ればせながら、勇気を持って健常児だけが通う書道教室に行き始めました。
私も無謀か?とも思うほどでした。
梅子さんは小学校から支援学校1本で地域の学校を知らない人でした。
幼稚園の並行通園や支援学校から1年に2回程度、地域の小学校で交流を持つくらいで、あとは障害者の中だけで暮らしていました。
梅子さんが色々な年齢の子供たちが通っている健常の世界にいきなり入るのはハードルが高すぎではないか?とも考えました。
お願いした先生は、姉・杏子が幼稚園から高校2年まで通っていた書道の先生でした。
書道の先生は、梅子さんの一番ひどい時と落ち着いて学べるようになった現在の梅子さんを知っていたので、教室に通うのにハードルが低くなった要因でした。
何より書道の先生が梅子さんを非常に可愛がってくださるので、本当に嬉しい限りです。

書道教室は、通ってみたら30人以上いる普通クラスそのものでした。
そこを1週間に1回、3時間座って書き続ける場として9年近く通っています。
支援学校1本の重度発達障害者が普通クラスに在籍するということは、先生初め、周りの子供たちに助けられてばかりです。
それでも、少しずつ梅子さんの障害名を知り、今では、書道教室に通ってくるお子さんの保護者の方から駅などで声をかけていただけるまでになりました。

文字を綺麗に書く以外の大切なものを学ぶこともできました。
習い事を開拓していくことは、辛い時もありますが、恩恵を受けられることも多々あるので、お子さんと一緒に学ぶことをお勧めします。

  • 文字を綺麗に書くと、他者から軽く扱われない。
  • 文字を綺麗に書くことで、読み手に思いを伝えれたり、相手の思いをくみとることができる
  • 書道を習うことで、はね・とめ・はらい・横線の右上がりなどが意識できるようになる
  • 書道を習うことで、健常児の社会を知り、社会性が身についてくる
  • 書道を習うことで、大人になっても余暇活動につなげていける

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。

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