🌸桜🌸です。
今回、重度発達障害の子供に必要な算数の課題についてまとめていきたいと思います。
「【家庭療育 5】数の世界」、「【家庭療育 7】タイル教材」、「【家庭療育 9】料理をなぜ教えるのか・療育まとめ」も合わせて、ご参考にしてください。
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【家庭療育】重度発達障害児に算数は必要
重度発達障害児は、言葉より算数の方が分かりやすい
どうして重度発達障害児に言葉ではなく、算数から教えるのが良いのでしょうか?
重度発達障害児は、言葉を覚えることは、非常に苦手です。苦手なことを教えるより先に、分かりやすい算数から教える方が子供との関係性を深められるからです。
うちの子供は、重度発達障害児で言葉もなく、多動でパニックもあります。そんな子供が算数を理解できると思えません。
言葉は、目に見えないやりとりの中で成立します。しかし、算数に使われている数字は、目に見える上に、その数字の背景にある「量」を可視化することでお金、時計、カレンダーなどの力をつけることができます。視覚優位の重度発達障害児にとって、算数を覚える方が言葉を覚えるより楽なんです。
算数を身につけることでたくさんの力をつけることができます。
- お金の理解
- カレンダーの理解
- 時計の理解
- 料理のレシピの理解
- 仕事で求められる数概念の理解
梅子さんは、重度発達障害者で、手帳は、A1判定です。
そんな梅子さんが早期療育でタイル算に取り組みました。
視覚優位と言われても、正直、耳からの情報より視覚の方が分かりやすいというだけでした。(当人比)
タイルもすぐに理解できたわけではありません。
しかし、工夫して噛み砕いてタイルを教え続けていくうちに面積や体積、量などを理解し、支援学校高等部を卒業する間際にお金の支払いを理解できるまでになりました。
重度発達障害者が物事を時間をかけて1つ1つ理解していくことで「パニック」は減りました。
パニックの原因は、色々ありますが、その中の1つに中途半端な認知があります。
この中途半端な認知から確実な理解に変われば、本人は、怒る必要も周りに不適切に訴える必要もなくなるからです。
- 重度発達障害児に苦手な言葉を教えるよりも分かりやすい算数を教える方が、時間を有効に使える。
- 数字を教えることで生きる力に直結できる。
- お金、カレンダー、時計、数概念などを理解させられる。
- 中途半端な認知から確実に分かる知識を得ることで、分かりづらさから解放される。
- 算数を教えることで、分かりづらい子供との関係性を深められる。
重度発達障害児に100までの数字を教える重要性
数字の1~100並べ
知的に遅れもある重度発達障害児に100まで教えるのは、難しいと思うのですが…
私も最初、無理だと思いました。しかし、何もせず、時だけ無駄に過ごすより、教えてみようと思い、取り組み始めました。
重度発達障害児に100まで教えるとストレスになるのではないでしょうか?
梅子さんも最重度発達障害児ですが、最初は、意味が分からず怒っていました。しかし、継続と工夫をしながら教えてみた結果、覚えてくれました。ストレスにはなりませんでした。言葉よりも算数の方が進み具合が速かったですね。
しかし、取り組んでみると100まで覚えることができました。
100と言っても1〜10の繰り返しのパターンなので、10個の数字のパターンを覚えてしまうだけです。
もちろん月日と工夫は必要でしたが、それでも覚えることができるんだと分かりました。
逆に、50音の平仮名を覚える方が難しいです。
理由は、50音1つ1つにパターンもなく、音声もバラバラなので記憶力をフルに使わなければいけません。
数字は、文字も音声も組み合わせさえ理解できるので覚えやすいです。
覚えることができたあたりから、子供のことも100並べを取り組む前より関係を深めることができました。
梅子さんも100までの数字のパターンが見えてきたら、縦でも横でも順番通り置けるようになりました。
勉強していく梅子さんの姿に希望が持てました。
100並べを詳しく知りたい方は、【家庭療育】発達障害の算数教材・100並べと【家庭療育】100並べの教え方と心を育てる療育をご参考にしてください。
- 重度発達障害児でも、100までの数字は覚えていける。
- 数字は、1〜10の数字10個を覚えれば、あとは100までパターンなので覚えやすい。
- 平仮名50音には、パターンがないので数字の方が簡単
- 100まで教えるという子供と共通した目的があるので、子供との関係性が教える前より深まっていく。
【家庭療育】重度発達障害児にタイル算から何を教えられるのか
重度発達障害児に数字以外に教えなければいけないことってあるのですか?
重度発達障害児は、数字は覚えても数字に伴った「量」は教えなければ、分かりません。その「量」を理解させるのが「タイル」です。
重度発達障害児に教える数字と量の関係性を解説
重度発達障害児は、数字を覚えることはできるのですが、それに伴う「量」は分かっていません。
あくまでも数字遊びの認識で止まっています。
例えば、計算は足し算、引き算など何桁でもできるのに、お金の支払いになると出来ない…というお子さんがいます。
数字に量が結びついていないので、1000円札1枚支払って、小銭のお釣りを受け取ると「お金が増えた!」と喜んでいるお子さんもいます。
確かに、1枚の紙切れが重さもある小銭になって何枚も返ってきたら、増えた!というのは、正論かもしれませんね。
しかし、1枚の紙切に書かれている数字の量や価値が分かれば、小銭を見て、増えた!とは感じなくなります。
その量や価値を表しているのが「タイル」という訳です。
現在、成人した梅子さんは、タイルを日常の中に取り入れて生活しています。
例えば、自分のお小遣いの帳簿だったり、施設でも働いた分、職員さんからタイルとして受け取り、工賃支給日に工賃と一緒にタイルを貼り付けた用紙ごと持って帰っています。
工賃を持って帰ってから、自分のお小遣いに入れているので帳簿で足し算をして計算しています。
他にも工賃から美容院代を支払っているので、帳簿につけるとき、引き算をして残りのお金を計算しています。
このように日常生活の中にタイルを入れることで、お金の価値、計算などの勉強が生きています。
学生時代に学んだことを生かしていくことが勉強だと思うので、ぜひ、早期療育の中で教えてあげて欲しいと思います。
- 数字に「量」を伴わせるためにタイルという教材が必要になる。
- タイルを仕事の中で使っていくことで仕事の成果を実感できる。
- タイルを使えば、支払いもできるので、お金の概念に結びつけやすい。
1〜10のタイル並べ
1〜10まで数にあったタイルを置くだけなんですね。すごく簡単そうですね。
はい。私たち教える側からすれば、非常に簡単です。しかし、発達障害児にとっては、非常に苦戦する課題の1つです。発達障害が「認知の障害」だと分かる課題でもあります。
1〜10まで並べさせることで、子供は、どこが分かりづらいのかが見えてきます。
特に6〜10のタイルの見分けが非常に難しくなる子供も多いです。
子供の認識は、5ぐらいが限度です。
分かりづらさを超えていくためには、分類とマッチングというやり方で違いを教えてあげてください。
その方法は、「【家庭療育】1〜10のタイル並べの作り方」と「【家庭療育】重度発達障害児に1〜10のタイル並べの教え方を解説」をご参考にしていただけたらと思います。
梅子さんも多分に漏れず、タイルの6以降が分かりづらかったので苦戦しました。
目で見ても違いが分からず、耳で数字を伝えても理解できません。
残されたのは指先の感覚だけでした。
分類とマッチング、そして指先の感覚で違いを教えていきました。
違いが見えてくると、自発的にタイルを盤の上に置いていかせても間違うことはなくなりました。
重度発達障害児でも勉強ができる姿は、希望そのものでした。
障害があっても学んでいける…教育の尊さを感じる瞬間でもありました。
- タイルを並べるのは一見、簡単そうだが認知の障害を持っている子供にしたら難しいのが分かる。
- タイルを通して子供のどこが分かりづらいのかが見えてくる。
- タイルを並べることで数字とタイルが一致し、次第に量が入ってくる。
1〜30のタイル並べ
1〜10のタイル並べの次は、1〜30のタイル並べをするのですか?
いえ。本来、1〜100のタイル並べを優先して教えます。その中で1〜10のタイル並べや1〜30のタイル並べを教えます。
では、なぜ1〜30並べをするのか?と言えば、タイルをクローズアップさせて教えるのが目的です。
1〜100のタイル並べをさせる過程で細かいところを子供がどこまで注目しているのかよく分からない時があります。
100も並べるのでタイルの大きさが5㎜✖️5㎜になります。
小さいものをよくみる発達障害児でも、100もあれば形だけで覚えてしまうので、細かいニュアンスが分かりづらいです。
そこで1㎝✖️1㎝のタイルを使って30まで教えることで、タイルの成り立ちを掴んでもらうのが目的です。
詳しく知りたい方は、1〜30のタイル並べの作り方と1〜30のタイル並べの教え方をご参照にして頂けたらと思います。
梅子さんは、1〜100並べを先に教えていたので、1〜30並べは比較的並べるのが早かったです。
100もタイルを置いていたことでコツを掴んでいたのだと思います。
1〜10、1〜30だけ…という風に徐々に数を増やすよりも、最初から100まで教えながら、途中、1〜10、1〜30を教える方がはるかに効率が良いことが分かりました。
- 先に1〜100のタイル並べを教えておくと、30までタイルを並べるのは子供にとってストレスなく簡単。
- 1㎝✖️1㎝のタイルを30まで並べることで、タイルの作りが見えやすくなる。
- 1〜10、1〜30というように少しずつ数字を増やすより、先に100まで教えておくほうが効率が良い。
1〜100のタイル並べ
重度発達障害の子供に100までタイルを置かせていくのは、ストレスになるし、無謀ではないのでしょうか?嫌がる子供もたくさんいると思います。
確かに初めての課題を苦手にしている発達障害児も多いです。しかし、必要なことだと教える側が割り切れば、子供はついてきてくれるようになります。100まで先に知ることで計算やお金、時計の仕組みを知ることができます。1〜10しか知識がなければ、時計の60分を教えることができません。
タイル並べの1番の核になる課題学習、それが1〜100のタイル並べです。
100までの数字に「量」があることを子供に知らせることが障害児の算数教育のキモです。
数字は分かって、計算ができても、お金の支払いやお釣りが分からない…それが重度発達障害児です。
しかし、数字に量を入れた時、お金の支払い時に財布の中身が減ったことを知ることができます。
子供が成人になって働いたお金を財布に入れるとき、計算やタイルを通してお金が増えたことを喜べるようにしましょう。
詳しく知りたい方は、1〜100並べの作り方と1〜100並べの教え方をご参照していただけたらと思います。
梅子さんも高校卒業して仕事にいき始めた時は、何を自分がしているのかさえ分かっていませんでした。
しかし、工賃をいただくたびに必ず梅子さんは、タイル帳簿をつけて、計算し、増えた事を確認しています。
散髪代金や旅行先の飲食代金を支払わせることで減った事を同時に教えていきました。
加減を知る事で、お金について見えてくるものがありました。
今は、減るのがすごく嫌なようで、必要経費以外は、物をあまり買わなくなりました。
こうやってお金の価値を少しずつ理解できるようになってくるので、重度発達障害児にとってもマネーリテラシーは必要だと思いました。
- 100まで並べる事で数字に対する「量」が理解してくる。
- 数字に対する量が分かれば、お金の加減を教えることができる。
- お金の加減が見えてきたら、お金の価値に気づくことができる。
- 100まで分かれば、60までの数字を必要とする時計や31まで必要とする月間カレンダーが理解できるようになる。
1〜1000のタイル並べ
100まで教えた上で今度は、1000まで教えるのでしょうか?
実は、1000も10000もあとは、同じことの繰り返しなんです。新しいことをまた、1から教える…ということではありません。
少し見えづらいですが、上記の画像を見たらお分かりになるかと思いますが、下段の1〜10のタイルと上段の100〜1000のタイルって大きさが違うだけで形は全く同じです。
これは、1000〜10000も同じことで、中段にある10〜100のタイルの形は、大きさを変えれば1000〜10000と全く同じです。
このタイルの形を永遠に繰り返すことで、10000以上の数も理解できるようになります。
梅子さんは、最初、1〜1000のタイル並べを教わった時、すぐに並べることができました。
1〜100の数字並べや1〜100のタイル並べを覚えるまでは大変でしたが、1〜1000のタイル並べを教わった時、置くのに時間はかかりませんでした。
要は、100までの数と量が入ってしまえば、後はすごく楽でした。
100まで入れば、物事を整理して考える力も同時についていたから、1000のタイルを並べるのも簡単だったのだと知りました。
ぜひ、重度発達障害児のお子さんに100までの数と量を教えてあげて欲しいと思います。
- 1〜1000のタイル並べも1〜10のタイル並べも大きさが違うだけで形は同じ。
- 100まで理解できたら、子供は、数に対してロジカルに考える思考を身につけている。
- 1000までタイルが理解できたら、その上の10000もすぐに理解できる。
1〜10000のタイル並べ
画像のタイルは、今までの黄緑色の色方眼用紙ではないのですね。
上記の10000タイルは、大きさと持ち運びを考慮してプロジェクトペーパーを使用しました。
梅子さんには、10000以上は教えないのでしょうか?
重度発達障害の梅子さんの生活で10000円以上使うことはあまりありません。そのため、10000円までにとどめています。
こうすることで、視覚的に仕事に対していくらその月、稼いだかが分かります。
重度発達障害児によっては、お金を受け取っても捨ててしまう子供もいます。
小さい時からタイルに親しんでいることで大人になって仕事についた時、報酬の視覚化として使用できます。
梅子さんは、施設や家で10000タイルを使って報酬をため、現金化して自分のお金に変えています。
自分の働きがいくらなのかを実感でき、意欲的に働けるようになりました。
- 10000円までならプロジェクトペーパーで現すことができる。
- プロジェクトペーパーを使うと仕事の報酬をタイルで現すことができる。
- タイルに慣れ親しむことで大人になっても十分通用する教材となる。
このようにタイルについて解説してきました。
重度発達障害の子供にとってタイルという教材は、一生使える教材です。
言葉をなかなか覚えない子供でも、算数という視覚的に分かりやすい勉強から入ることで指示に従い、学んでいけます。
よくJ子先生が私に教えて下さった言葉があります。
これは、重度発達障害児の苦手とする言葉を教えようと躍起になって年月を費やすより、視覚的に分かりやすい算数を教え導く方が学ぶ姿勢が早く身に付きやすいと思います。
我が子が言葉の発語もない重度発達障害児だからといって、学習を諦めないようにと思っています。
ぜひ、希望を持って取り組んでいただけたらと願っています。
では!🌸桜🌸