Peach blossom(家庭療育ブログ)

【家庭療育 6】文字の理解

🌸桜🌸です。

療育5では、発達障害のお子さんの程度に関係なく、数字を教えていくことの重要性について書きました。

今回は、「文字」について重度発達障害の梅子さんがどうやって獲得していったのかについて書いていきたいと思います。

うちの子、書字困難で文字が書けないし、読めません。

🌸桜🌸

梅子さんも、同じで重度の書字困難でした。人一倍以上の努力は必要ですが、書けたり、読めたり出来るようになりました。文字を通して、家族の言いたいことや自分の思いを表現できるようになりました。

どうして書字困難と言われる発達障害児に文字を教えるのでしょうか?

言葉もないから、子供の思いを周りに伝えられません。

親や家族、周りの人たちの喋っていることも分かりません。

分からない世界の中で生きていくのは、本当に辛いです。

そこで外部に自分の思いを伝えたり、相手の思いが分かるツールが「文字」です。

梅子さんも重度の書字困難を持っていました。

小学校低学年の時の様子について、下記にリンクを貼っておきますので、ご参考にしてください。

書字困難を克服するのに、クレヨンで大きく書いて何度もなぞりました。

最初は、数字、次に平仮名、そして、カタカナ、漢字とすすみました。

大きく書くなぞりから、次第に一人で書けるようになり、最後は、小さい文字も書けるようになりました。

平仮名を練習途中、名前だけは、最初から漢字を入れたので、後から修正する事なく楽になりました。

喋れないから、文字の知識を身につけさせ、コミュニケーションの1つとして使いたいと考えていました。

文字が梅子さんにとって、なくてはならないものへと変わりました。

成人した今では、施設の書類に本人確認のところで名前(もちろん漢字名)を書いています。

私が梅子さんの気持ちを確認するときなど、文字で書いて、どっちがいいのかを選んでもらっています。

梅子さんに伝えたい用事などは、文字にして読んでもらって私の思いを伝えています。

このように「文字」と言うのは、非常に便利で、喋れない発達障害児・者のQOLをあげてくれますので、是非とも教えてあげてください。

  • 発達障害の程度に関係なく文字は、人一倍以上の努力により文字が書けて、読めるようになる。
  • 文字が分かれば、自分の気持ちが伝わり、相手の言いたいことも分かる。
  • 文字が書けることによって、大人になって書類のサインに困らない。
  • 文字が書けて、読めることは重度発達障害者のQOLが上がる。

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【家庭療育】視覚優位ってどうなの?

梅子さんは、重度発達障害者なので会話は出来ません。

梅子さんとある程度、やりとりをするために必要なツールが数字同様「文字」でした。

わざわざ苦労して文字を教えなくても、絵ガードにしたら良いのでは?

🌸桜🌸

梅子さんは、確かに視覚優位ですが、残念ながら、絵カードに描かれている意図が分かりませんでした。絵+文字の内容に意味をのせることが絵カードだけより伝わりやすかったです。

梅子さんは、絵カードを見る力はあるのですが、あくまでも「見る」だけであり、絵カードに描かれている内容を察することが出来ません。( ; ; )

梅子さんが幼少期、発達障害児には、絵カード…みたいな風潮がありました。

大量の絵カードをパソコンで作成しては、梅子さんに与えてみても、全て反応が薄いんです。

見ているだけで、全く絵カードを通してやりとりが出来ないんですね。

例えば、トイレの絵カードを見せて、「トイレに行こう」と誘っても、無表情でちらっと絵カードを見るだけでトイレに行くことなどなかったです。

それでも、コミュニケーションツールがないのだから、絵カードを作成しては、見せ続けるしかないのかな…と思いました。

J子先生のところで勉強するようになって、まず最初に教えてくださったのが「観察」でした。

親の徹底した観察力を磨くこと…私には、全くなかった力でしたが、梅子さんの内面を知るために下手くそなりにも観察しては、記録をつける…という毎日でした。

流石に観察力や記録を書くのが苦手な私も何年か経過すると少しずつ見えてくるものがありました。

梅子さんが絵カードに対して反応が薄い意味を悟ることが出来ました。

梅子さんは、何度も発達検査を受けるたびに「視覚優位」と言われてきたのですが、その言葉の深い意味が分かりませんでした。

要は、梅子さんは「見ているだけ」だったのです。

その絵を見ているだけでその絵に描かれている意味を悟ることが出来なかったのです。

そんな状態の視覚優位ですが、私は、描かれている内容を悟るところにまで至っていない梅子さんに気づきました。

絵カードは、梅子さんにとってさほど意味をなしていなかったのだと知りました。

梅子さんは、重度なんだ…と改めて娘の深刻さに気づきました。

  • 絵カードだけでは、意味を悟れない。
  • 文字に意味をのせることで理解できる。
  • 視覚優位であっても、絵を見るだけの力であって、悟る力ではない。

【家庭療育】会話ができないからこそのツール

絵カードを見せてもなかなか、こちらの意図が伝わらず、会話も全くダメな状態の梅子さんに途方に暮れました。

絵カードを見せても伝わらないのでは、どうしようもないのでは?

🌸桜🌸

はい。おっしゃる通りです。

だから、文字の「書き」と「読み」を教えました。

J子先生は、梅子さんに文字を教えることを勧めてくださいました。

「読み」「書き」

この2つの力をつけること…梅子さんと繋がれる唯一のツールでしたので、まずは、平仮名の50音の「読み」と「書き」、並行して「0〜9の数字を書く」という力をつける課題に取り組みました。

詳しい取り組みは、梅子さんの小学校編 2(平仮名・本読み・マラソン)にも書いていますが、50個もの平仮名を読ませるために木製の積み木を2セット使って、読みを徹底して教えました。

最初は、梅子さんも何をしているのかさっぱり分からず、泣いてばかり(意味不明だからやりたくない!!!の意味)でしたが、課題の内容が見えてくると少しずつ泣き止みました。

何をしているのか予想が立てば、泣くことがなくなりました。

音声を頼りに次第に「あひるのあ」の「あ」という文字が見えてきて、オウム返しで少しずつ出てくるようになりました。

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なぞり書きは、大きな自由帳にクレヨンで何度も何度も色を変えて勢いをつけて書きました。

勢いがあるので、文字は、書きながら覚えたと言うより、指揮者がタクトを振るように体で覚えました。

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以上のやり方で梅子さんは、文字の「読み」と「書き」を年月を書けて獲得していきました。

  • 文字は、会話ができないからこそ役立つツール。
  • まずは、平仮名の読みから教えた。
  • 並行して、数字と平仮名のなぞりで「書き」を教えた。
  • 課題を進めていくと、子供も勉強内容に予測ができ、泣き止む。

【家庭療育】書字困難がコミュニケーションを阻む

書字困難って言うけど、どういうところがうまくいかなかったのですか?

🌸桜🌸

梅子さんは、曲線を書くのが1番苦手でした。

「書き」について、梅子さんと取り組んで初めて、非常に重度の書字困難を持っていることに気づきました。

数字の「2」がどうしても書けませんでした。

特に「2」の曲線の部分がどうしても書けませんでした。

クレヨンを持っている手がどうしても方向違いの方に進んでしまいました。

「曲線」の線の引き方が全く分かりませんでした。

上記にも書きましたが、オーケストラの指揮者がタクトをふるが如く、リズム良く勢いをつけて書き込む以外方法はありませんでした。

最初は、なかなか書けず、悪戯に時間だけが経過しているように思えました。

見本をみても書けず、体でもなかなか覚えてくれない梅子さん。

正直、何度も心が折れそうでしたが、文字しかコミュニケーションツールがないと分かっていたので、背水の陣の気持ちで取り組んでいました。

しかし、流石に梅子さんの分かりづらさ以上に親の「教えたい!」という気持ちの方が優っていたのか、次第に「2」が書けるようになってきました。

同時に平仮名もあ行からか行へ、か行からさ行へと書けるようになってきました。

同時並行の指導のおかげで少しずつ平仮名、数字が同時に書けるようになっていきました。

  • 発達障害児の中には、曲線や斜め線を苦手としているお子さんもいる。
  • 曲線を書くとき、子供は、どっちの方向に進んでいいのか分からないので、迷っている箇所には特に丁寧に指導が必要。
  • 非常に分かりづらいので教える側も覚悟と教え切りたいというマインドが必要
  • 教える側が焦っても書けないので、年月を要することを理解しておく。

【家庭療育】書ければ見えてくる文字

平仮名や数字が書けるようになって、梅子さんは、何か変わりましたか?

🌸桜🌸

カタカナや漢字が平仮名や数字を教えているときより凄く楽になりました。

理解が加速してきた感じでした。

時間の経過とともに数字と平仮名を書けるようになって、カタカタにうつったとき、カタカナは、思ったより早く書けるようになりました。

考えてみれば、平仮名が難しいのは当たり前なんですよね。

ほぼ「曲線」で構成されているからです。

平仮名を書けるようになるということは、カタカナは、さほど難しくない…という事でした。

理由は、カタカタや漢字は、直線で構成されている文字が多いからです。

1番難易度の高い平仮名を書けたら、直線の多い文字を書くのは簡単…ということでした。

漢字を書くようになって、顕著にそのことが証明されました。

梅子さんは成人した今でも書道をするとき、平仮名より漢字の方が書きやすそうです。

硬筆でも同じです。

手本も漢字の方がよく見えています。

書くことばかりをしてきた今、梅子さんは、読むこともかなり上手くなりました。

今でも施設から帰宅して一緒に課題学習をするときは、3回、朗読用の本を読んでいます。

意味は伴っている場合とそうでない場合がありますが、とにかく読むことに関しては、貪欲なくらい読んでいます。

あらゆるものを目で追って読んでは、読んだ文字をじっと見つめています。

私が梅子さんに伝えたいことをスマホのアプリ機能を使って手書きで書いた文字など、さっと見てわかる範囲で理解し、動いてくれます。

梅子さんの判断を仰ぐときも文字を見せて、どうしようか?と聞いては、指差しで答えてもらっています。

文字を通して、ようやく梅子さんと少しコミュニケーションが成立するようになってきました。

まだ達者とは言えませんが、明らかに文字を知らない前とは違い、コミュニケーションがとりやすくなりました。

重度発達障害者にとって文字の読み書きは、QOLの向上にも一役買ってくれます。

重度でIQが低いから…や書字困難だから、文字は無理…と早々と諦めるのではなく、この子にとって、生きる上で必要な財産なんだと思って教えてあげてください。

  • 平仮名と数字が書けるようになると、カタカナと漢字を書く練習は加速した。
  • 曲線が書けると、カタカナ、漢字のような直線の多い文字は、簡単だった。
  • 文字も朗読により文節ごとで読めるようになった。
  • 文字が書けて読めると、周りにある文字を積極的に読み始めた。
  • 文字を通して、重度発達障害者とコミュニケーションがとりやすくなった。
  • 文字を通して、重度発達障害者のQOLが上がった。

次回は、タイルというツールについて書いていきたいと思います。

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。

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