Peach blossom(家庭療育ブログ)

【家庭療育】重度発達障害児と思春期危機について解説

🌸桜🌸です。

重度発達障害児の「思春期危機」について考えていきたいと思います。

「思春期危機」って何ですか?

🌸桜🌸

思春期に子供が荒れ初めて、大人になってもその状態を保った事を指しています。

私も正直、この言葉はJ子先生に教えていただくまで知りませんでした。😓

思春期危機という言葉を聞いた時は、まだ梅子さんは小学校の低学年あたりでした。

重度発達障害児が大人になっていく過程は、どのような道を辿るのか心配はしていました。

健常児とは違った道を歩むのだろうとは思っていたのですが、想像以上に大変だと後から分かりました。

言葉もなく、意思疎通できない重度発達障害の子供が親の自分より体が大きくなり、力もつくと不安で仕方がない…と思われる保護者の方も多いと思います。

多分に漏れず、私も梅子さんが私より体も大きくなり、暴れ出したら止められるか不安でした。

そんな不安を抱えていた時、「精神科医の子育て論」服部祥子著の本を読んで、払拭されました。

思春期でも適切に早期療育をしていれば、思春期を穏やかに超えられる!と分かって希望が持てました。

そんな重度発達障害児の思春期のあり方について解説していきたいと思います。

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【重度発達障害児】思春期危機を起こすとどうなるの?

重度発達障害児が思春期を迎えるとどうなるのでしょうか?

🌸桜🌸

子供が適切な早期療育を受けていたかどうかで大きく変わります。適切な早期療育を受けていなければ「思春期危機」が起きてしまいます。

まず、子供が思春期になった時、子供に何が起きるのかをJ子先生から教わりました。

(1)思春期危機 エネルギッシュに問題の多発する時期である。
子どもにとっても受難の時期

① 可愛かった子どもは 大人の身体(大きい男性)になる。

歓迎されるより、うとまれるようになる。
拒否されるようになる。
母親の危機 効果の上がらない療育に失望し、消極的になる。
更年期に入る。
扱いにくい、恐ろしい、うとましい、いやらしい、疲れる

② 親離れ子離れの時期である

自立しようとする生活年齢である。
反抗 いらだち 自己主張 不従順 プライド
父親を拒否 一緒に行きたがらぬ 目をそらす

③ 性が大きく感情・思考を支配する (本人も周囲も)

*性に関するトラブルが頻発する。
周囲の感情について
母親‥‥‥‥拒否感情 悲しみ 不安
仲間‥‥‥‥性への強い関心 そそのかし いたずら いじめ
大人社会‥‥性に過敏で、痴漢とみなす。
警戒する。

④ 若々しいエネルギーにあふれている エネルギーのはけ口がない
何もすることがない。

⑤ てんかん発作の始まることがある。

NPO法人トモニ発達支援所「よりよい育児と教育を求めて」(pdf形式)より

重度発達障害児と言っても、思春期は、健常児と同じように心の葛藤が起こるのですね。

🌸桜🌸

はい。大人になっていくための準備が始まります。

それでは、思春期を迎えた重度発達障害児をもった家族はどうなっていくのでしょうか?

🌸桜🌸

向き合い方(無知なる愛を持って…)次第では、以下のようなケースを起こしてしまいます。

(2) 子どもの状態は家族を苦しめる。
<状態> (苦しみ 混乱 怒り 不安の表現)
自傷行為
他傷行為
固執性の強化
パターンの強化
反抗 いらだち 自己主張 不従順 プライドがある
拒否 (一緒に行きたがらぬ 目をそらす)
家事や作業を引き受けない。
パニック ひとり笑い 突然の大声 原因不明の大泣き 暴力 物を投げる
儀式的行為 髪をさわる におう 不機嫌 いらいら 外出をきらう
動かないで、多食する → 肥満

性に関して
裸になる 人前でマスターベーション 自己刺激行動の増加
好きな人と握手 抱きつき キス 待ち伏せ うろつき じっと見つめる
夕方自転車ででかける 朝登校時間に女の子をつける
一人で外出したがる

NPO法人トモニ発達支援所「よりよい育児と教育を求めて」(pdf形式)より

【重度発達障害児】思春期危機を起こさないためには

思春期危機を起こさないためには、どうすればいいのでしょうか?

🌸桜🌸

幼い時から開始する「適切な早期療育」に取り組む必要があります。

(3)対処方法

1) 見通しを持って育てる(学童期までの育ちによって、思春期像が決まる)

① 親は、子どもの性を肯定し、大人になることを歓迎する心の準備が必要。
② 性を考慮し、生活年齢を考慮した育て方をする。 ☞ 5)生活習慣の確立
子どもは男や女になる。男や女として認めた育て方をする。
③ 生活年齢を考えて、どんなに大変でも早期に身辺自立をさせる。
④ 「指示に従わせる」関係を確立しておく。
⑤ 家事をどんどんさせて、できるようにしておく。日常生活を忙しく
⑥ 困難な課題を我慢してやりぬく精神力をつけておく。 引き締まった表情は、逆境にあって作られる。
⑦ 歩く習慣をつける。ともに山歩きをたのしむ。
⑧ スイミング 趣味
⑨ 日記による反省の習慣 話し合いの習慣をつける 言語の重要性。
反社会性 非社会性 自由と不自由
痴漢とは
紳士とは

2) 薬物療法 (精神の安定をはかる → 本人も家族もすくわれる)

3) 運動(山歩き、マラソン)

4) 家事や作業をさせる

上記のような思春期の状態が来るかもしれない。
それを念頭にいれて、トモニ療育センターでは幼児期から 家庭療育に取り組んできた。
思春期になって一層豊かに発達し、家族は幸せな生活を営んでいる。

NPO法人トモニ発達支援所「よりよい育児と教育を求めて」(pdf形式)より

梅子さんは、上記の取り組みを小学2年から開始しました。

そして、思春期を迎えた時、起こった出来事は「てんかん」だけでした。

指示の通る関係や人から学ぶことを知っていた梅子さんとの親子関係は、今でも良好です。

上記の対処方法は、思春期を無事乗り切れるのか…というヒントがつまっています。

④ 「指示に従わせる」関係を確立しておく。」については、以下の記事で解説しています。

【家庭療育】早期療育について解説
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⑥ 困難な課題を我慢してやりぬく精神力をつけておく。 引き締まった表情は、逆境にあって作られる。」については、以下の記事で解説しています。

【家庭療育 10】勉強の問題行動
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⑦ 歩く習慣をつける。ともに山歩きをたのしむ。」については、以下の記事で解説しています。

【家庭療育 4】山登り、歩く、マラソン
療育の基本は、体力が必要です。山登り、歩き、マラソンで体力をつけて、勉強する姿勢を身につけましょう。

⑤ 家事をどんどんさせて、できるようにしておく。日常生活を忙しく」や「⑧ スイミング 趣味」について、現在の梅子さんの様子をTwitterとインスタグラムでアップしています。

支援の時代に思春期の重度発達障害者とどう向き合うか

私には、ここまで子供に出来ません。私が対処方法を学んで、支援の方に伝えてお任せしたいと思っています。

🌸桜🌸

子供に最後まで責任を持つのは親である自分しかいません。方法論だけ学んで他人任せだと、残念ながら、上記の対処方法を取り組んでも効果は出ません。

今の福祉の世界は、支援の時代です。
梅子さんの3歳くらいの時に出来た「支援」という言葉です。
今の支援では、思春期危機に立ち向かうことは出来ませんでした。
梅子さんに与えるのは、支援ではなく「指示に従う」という姿勢を身につける事でした。
1つ1つ細かい課題をこなすたびに私の指示に従って梅子さんは、学び続けてきました。

梅子さんは、重度ゆえに、人から学ぶ…という事も知りませんでした。
野生に近い状態の梅子さんを人らしく生かせることができるのか悩みました。
課題学習で算数を教える事で、少しずつですが、野生から人へ成長してきました。

大人になった今でも、梅子さんが人としてしてはいけない事をしたら対決して教えます。
対決と言っても、暴力的な事ではなく、書き写しをして、自分のしてきた行いを見つめ直してもらっています。
梅子さんは、これからも何度も人の道を外すでしょう。
その度に、自分の行いを見つめ直してもらうつもりです。
そうやって、梅子さんを社会に出す…という繰り返しを送っています。
梅子さんは、何度も何度も失敗し続けて、苦しんで、そして成長していく人間なんです。

既に思春期をむかえた重度発達障害児には、どう向き合えばいいのでしょうか?

🌸桜🌸

まずは、体を動かす山登りやマラソンを取り入れながら、料理や課題学習をお勧めします。重度発達障害の勉強と観察記録を取りながら、子供の立場に立って「理解と共感」の眼差しを持って向き合うことが大切だと思います。

J子先生の療育センターでは、強度行動障害者の取り組みについて具体的な記録を残しています。
NPO法人トモニ発達支援所「よりよい育児と教育を求めて」(pdf形式)の中の81ページにある「添付資料1」に記載されています。
ご参考にしてください。

私は、課題学習や運動、料理といった取り組みの中から、発達障害の子供に対して「理解と共感」を持てることが大切だと思います。
発達障害の子供に対して、尊敬の念を持ちながらも、対決すべきところは、対決し、褒めるところは、褒めて、認めるところは、認め、分かりづらさを理解し、どう導いてやるのか…というところに尽きます。
「理解と共感」なく、子供を責めるだけせめて、困った子供、可哀想な子供、障害があるから仕方がない子供、「こういう障害のある子供だから…」と諦めから甘やかしに発展する事が思春期危機を助長させてしまうと考えています。
親の「諦め」や「無理解」が思春期危機のトリガーとなってしまいます。
障害があっても、希望をもち、教えなければいけないことは、しっかり教えて社会に出ても最低限のルールは分かるようにしてやることが大切だと思います。

成人した梅子さんと私の療育は、まだまだ終わっていません。

発達障害の子供と向き合うたび、自分のいけてなさを突きつけられている気分になることがよくあります。

落ち込む事もあるし、もう療育なんかやめてしまおうと思う事も度々です。

いっそ梅子さんを手放そうか…と正直、頭をよぎる事もあります。

今も迷いに迷い、悩みに悩み、最後は、考えに考え抜いて梅子さんと向き合っています。

それでも、梅子さんとやり残した事がある…と思うと、向き合ってしまう自分がいます。

それもまた、人間なのかも知れませんね。笑

  • 我が子と真剣に向き合えるのは、親だけ
  • 思春期危機を起こさないためにも早期療育は、重要
  • 思春期になっても取り組みによっては、子供も変わっていける。

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。

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