梅子さんの幼少期編 3(講演会)

梅子さんの幼少期編

🌸桜🌸です。

梅子さんが4歳か5歳頃のお話です。

梅子さんが発達障害と診断されて以降、4歳から5歳くらいの様子を教えてください。

🌸桜🌸
🌸桜🌸

梅子さんの障害のことで絶望の真っ只中にいました。
同時にのちの梅子さんを育てるのに協力してくれた先生との出会いがありました。

私の母も梅子さんを育てるのに協力してくれました。
当時の私は、梅子さんの障害のことで、うつ病になってしまい、生活するのもやっとの状態でした。
そんな中、母が児童相談所の親の会に参加してくれて、ある講演会の案内を持って帰ってきました。

その講演会に参加することで私と梅子の人生が次第に変わっていきました。
その講演会の内容を交えながら、発達障害とはどういう障害なのかを解説していきたいと思います。

講演会の案内を見て

講演会の案内ってどういう内容でしたか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

詳しいことは忘れましたが、育児と教育…という題名の講演会だったと思います。

母が持って帰ってきた自閉症の講演会の案内を見て、すごく懐疑的に見ていました。
当時の療育的なお話は、子供を受容しよう!という風潮でした。(多分、今現在もそうだと思います)
言い方が悪いですが、子供の言いなりになるような子育てを推奨していました。

子供を受容するマインドは必要だと思うのですが、なぜ嫌悪感に感じたのでしょうか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

私の叔父が身体障害者で祖父母の愛情が裏目に出て、家庭内暴力が起こってました。
DVが兄にあたる私の父や母にまでおよびだして、住んでいる家を出ざる得なくなりました。

私の中では、受容を推奨するような講演会など行きたくもなく、聞きたくもなかったというのが本音でした。
母に勧められても、かなり渋っていたのが正直な所でした。

しかし、講演会に参加したことのない私にとって、勉強のためになるのでは?と母の強い勧めで嫌々ながら参加しました。

講演会

講演会は、市内の児童入所施設の体育館で行われました。
時間通りに始まり、60歳くらいの女性の講演会の壇上に立ちました。

私は、その女性が喋りだす前に、勝手に頭の中で「子供の全てを受け入れよう!」などと言い始めるのだろう…と想像してうんざりしていました。
しかし、その女性が開口1番…

自閉症は、虎や熊のような野生動物と同じです。
小さい時は、虎も熊も可愛いのですが、大きくなって街などに現れると、怖がられる存在になります。
自閉症もまさしく同じです。

私は、驚きました。
私の頭の中で思っている事を代弁してくれてる!!!

野生動物と同じ状態の人間…それが教育を受けていない発達障害者そのものでした。
野生の人間に教育を与えるというのだから、正直、ぶっ飛んだ考えだと思いました。

野生の人間に教育ってどうやって与えていくのでしょうか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

この講演会で教えてくれたのは、「タイル算」という算数でした。
タイルを使って、勉強を教える方法でした。

野生の人間である重度発達障害の子供に勉強を教えるなんて、一見、無謀のように思えます。
しかし、思い出していただきたいのは、ヘレン・ケラーとサリバン先生の初期の対決です。
2週間という期間限定の中、手掴みの食事をするヘレン・ケラーにスプーンを持たすために格闘し、最後は、ヘレン・ケラーが折れてスプーンを持って食事をした…
サリバン先生の命懸けの対決が教育に導く第一歩になりました。
ヘレン・ケラーのスプーンの代わりにタイルを用い、サリバン先生の代わりに親の私が梅子さんの教師になることを決意しました。

私は、この「タイル」という仕組みにとても興味を持ちました。
正直、重度発達障害児に算数など理解できるわけもなく、数の概念なども持つことなど不可能だと考えていました。
それを解決するために「タイル」という教材を用いて、算数の世界を教えるのだから、興味がわかないわけがありません。

また、当時の療育の風潮に「嫌がることはさせてはいけない。心が壊れる」と定説がありました。
子供が泣けば、支援者は取り組みをやめて、子供の興味のあることをさせたり誘導したりして、機嫌をとる方法です。

子供の嫌がることをさせることは、虐待につながるのではないでしょうか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

確かに、暴力・罵声による支配は、教育ではありません。
しかし、将来を考えて、教えたいことを教える過程で子供とぶつかる場面は、上記でも説明したヘレン・ケラーとサリバン先生の関係そのものです。

ヘレン・ケラーとサリバン先生の関係は、少なくとも虐待ではなく教育でした。
ここの違いを履き違え、「無理矢理、子供に教えることは虐待だ」と位置付けることは無知だと考えています。

将来を見据えてスプーンの持ち方を教えることは決して虐待ではありませんでした。
重度発達障害児に勉強を教えることも同義です。

しかし、重度発達障害児はIQも低く、到底、算数を覚えていく能力はないかと思うのですが。

🌸桜🌸
🌸桜🌸

私も最初、その考えが頭をよぎりました。
しかし、自分の勝手に作り出した妄想だと今は思います。
誰も証明したことがないから、不可能…と思い込んでいただけでした。

講演会では、子供のIQなど関係なく、数字を教え、教育していく事を伝えてくれました。

私としては、えっ?教えられるの?というよりも、えっ?教えていいのかな?という思いが先に立ちました。
教える術さえ見つからない子供にその先生の考案した教材(材料は、工作用紙)を使って、理路整然と教えていく事ができるなんて、夢のような気になりました。
梅子さんは、3歳の時点で1歳以下のIQしかないと大学病院の先生に言われ、正直、学習など諦めていたのです。

でも、教える術があるのなら、梅子さんに与えてみたい!と考えました。
私の人生における初めて希望を感じた瞬間でした。

梅子さんが4歳くらいに聞いた講演会以降、どうなりましたか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

講演会の内容に感銘を受け、梅子さんが小学2年の時、トモニ療育センターに入会し色々な知識を学びました。
以下はほんの一例ですが、梅子さんが理解した内容です。

  • お金の計算
  • お金の支払い
  • お釣りの計算
  • 家計簿をつける
  • 10000までの概念
  • アナログ時計とデジタル時計の理解
  • 文字を読む・書く

梅子さん、高3の時、お金の支払いなどの理屈をマスターし、単式簿記で1ヶ月使えるお金の家計管理を自分でしています。
1万円までなら、金額を見て、支払ったり、ちょっと上のお金を出して支払ったり、ちょうどのお金を支払ったりと出来るようになりました。
自分の散髪代金(美容院大好き)は、自分の稼いだお金で行っています。

梅子さんの苦手な時計も既に理解し、24時間でアナログ時計もデジタル時計も読めるようになり、「後、○○分待って」という事も理解出来るようになりました。

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正直、IQと学習は、相関関係にあるとは言えないと私は今でも思っています。

例えば、子供を教えていくうちに行き詰まってしまった場合、山道を思い出してください。
山道は、決して1本ではありません。
たくさんの道が同じ山頂につながっています。
行き詰まった地点から別の道につながるように自分でバイパスを作っていき山頂を目指すのです。

この言葉は、計算をして家計簿管理している梅子さんを見るたびに思い出される言葉でした。
IQの数字に囚われては、子供にあきらめを抱いてしまいます。
観察から可能性を模索し続けることが結果、突破口につながります。
工夫と観察、そして可能性と希望を持ち続けること教育の原動力になるのかと思います。

初めての講演会が私と梅子さんの人生で大きな転機を迎えました。
講演会がなければ、私は梅子さんの人生に絶望し、彼女に期待もしなかったでしょう。
教育を与えることで梅子さんは、少しずつ時間をかけて人としての人生を歩けるようになりました。

教育の素晴らしさを伝えてくれた河島先生に感謝の気持ちを込めて

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。

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