【家庭療育】重度発達障害児によるセルフ・エスティームの高め方について解説

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🌸桜🌸です。

今回は、セルフ・エスティームと梅子さんについて書いていきたいと思います。

セルフ・エスティームって何ですか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

セルフ・エスティームとは、自己肯定感の事です。

自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉です。

私も9年通った療育センターのJ子先生から教わった言葉…それが「セルフ・エスティーム」でした。

セルフ・エスティーム(自己肯定感)…最初、この言葉と意味を聞いた時、正直、ピンときませんでした。

大泣きという問題行動が激しい梅子さんとどう結びつけて考えたらいいのか分かりませんでした。

自分のこともよく分からない梅子さんにどうつなげていくんだろう?と思っていました。

無知な私と問題行動しか起こさない梅子さんがどうやって自己肯定感をつけていったのかをお話ししたいと思います。

  • セルフ・エスティームは、自己肯定感
  • 重度発達障害児にセルフ・エスティームを高めることは重要

問題行動の重度発達障害児の梅子さん

梅子さんの問題行動って具体的にどんなものですか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

梅子さんの問題行動の1つに「大泣き」があります。

梅子さんは小学校5年生まで何かにつけては、大泣きばかりして日常生活でも課題学習でもうんざりするほどひどい状態でした。

大泣きの理由も「嫌だ!」という意思表示から理由が意味不明なものまであり、私が梅子さんの気持ちを汲んであげる事ができませんでした。

理由も分からない泣き声にイライラする一方でした。

あまりひどい時は、私がノイローゼになり一緒に過ごすことさえ嫌だと思うほどでした。

そんな時、J子先生から「彼女の良いところを10個以上メールに書いて送ってください。」と連絡がきました。

私は、その内容について書こうと思ったのですが、手が止まりました。

1つも書けないのです。

全く思い浮かびませんでした。

でも、J子先生が答えを待っていると思うと正直焦って、無理矢理、なんでもいいから書いて送った記憶があります。

書いた内容は、忘れました。

でも、10個もなかったです。

後からJ子先生のセッションで私の書いた内容については言及されませんでしたが、他の保護者の方から「我が子に良いところなどありません。」と回答をいただいた旨を教えてくださいました。

正直、私もその保護者の方と同じです。

梅子さんに良いところなどないと思っていたからです。

  • 子供の問題行動は、いくらでも思いつくのに、子供の良いところが全く思いつかない。
  • 子供の問題行動に理解を示すことができない。
  • 子供の問題行動に振り回されて、自分の中でイライラだけが膨れ上がる。

「当たり前」のマインドからの脱却

セルフ・エスティームの高め方が分からないまま、ただ無駄に時間が過ぎていきました。

🌸桜🌸
🌸桜🌸

梅子さんの大泣きが激しくなる一方で、次第に私が梅子さんを泣かさないように梅子さんの顔色を伺うようになっていきました。

それは、適切な向き合い方ではないのですか?

🌸桜🌸
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子供の問題行動に振り回されていて、教育できていない表れです。

J子先生から「彼女を泣かさないような課題はいくらでも設定できます。しかし、教えなければいけない事があります。泣きを恐れては教えられないです。」とおっしゃられました。

その時、はっとしました。

大泣きに立ち向かわないとと思いました、

同時に教える私の自信の無さと梅子さんに対する信頼のなさや諦めが梅子さんに伝わっているのでは?と思いました。

でも、もっと大切なことを私は分かっていませんでした。

J子先生から「あなたは、子供がまず健康であるということが当たり前だと思いすぎて、ありがたさを理解できていないですね。感謝の思いがないです。」と教えてくださいました。

梅子さんは、重度自閉症であるけれど、健康であり、動けます。

歩いたり、走ったり、泣いたり、笑ったり、トイレも取れたし、自発呼吸だって当たり前にできます。

晴れた日は、散歩もできます。

泳げたりも出来るし、山に登ったりもできます。

普通にお箸も持てるし、食事も自分の力でとれます。

当たり前の事が出来ない人たちがたくさんいる事、死がどれほどの苦しみを伴うのかを知らなかった私に小児科医のJ子先生が今まで救えなかった患者との苦い経験を1つ1つ教えてくださいました。

ただ目の前に当たり前に元気でいる梅子さんそのものが当たり前でないことを教えてくださいました。

まずは存在そのものに感謝すべきであり、そして、そこからスタートして梅子さんと向き合う事が大切だったのだと思いました。

  • 親が、健康な子供をもったことに感謝しよう。
  • 問題行動を起こさせまいとする姿勢が子供の問題行動を助長させている。
  • 問題行動を受け止め、対決する覚悟を持つ。

重度発達障害児の梅子さんの思いを知る事

問題行動の激しい梅子さんにどんなことをまずしたらいいのですか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

分かりづらさが深刻な梅子さんの存在を認め、褒めることからはじめました。

問題行動の激しい梅子さんでしたが、J子先生から向き合い方を教わった事で穏やかにいるときやなんでもなんでもない時でも「良い子だね。」と笑顔で声をかけていきました。

そして、1番のほめどころは、課題学習のなかにたくさんあることに気づきました。

特に苦手な文字を書く練習の時、全く書けなかった梅子さんですが、ほんの少しでも自分の力でペンを動かそうとしたときなど、「自分で書こうとして偉い!」や「動かそうとした方向であってるよ。」など褒めました。

書く事でも計算でも課題学習の中で出来た結果だけを褒めるのではなく、その努力の過程ならたくさん褒めるチャンスがあることに気づきました。

最初から重度の認知障害で分かりづらいんです。

だからこそたくさん褒める事ができるのです。

日常生活も課題学習の時の態度なども無茶苦茶で褒めるところなどない子供だと思っていたのですが、それは、私が梅子さんの問題行動だけを見つめていました

しかし、テーマに沿って課題学習を行う事で梅子さんと歯車があい、その中にこのテーマを超える事ができるのでは?という希望がかすかに見えてきました。

課題学習の出来たかどうかの結果ではなく、課題学習を通して過程を見つめていく事で梅子さんという人間を知る事が出来る…それが療育者にとって必要な視点なんだと知りました。

大泣きの原因は、本当にシンプルな内容でした。

梅子さんは、いつも分かりづらさから「私には出来ないよ〜!」という意味で自信がなかっただけでした。

そして、大好きな母である私に課題学習の時、分からない所を理解して欲しい努力している自分を褒めて欲しい頑張っている私に笑顔で向き合って欲しい最後まで課題学習を取り組んだ努力を認めて欲しかっただけでした。

  • 重度発達障害児は、そもそも分かりづらいのだから、褒めるところはたくさんある。
  • 努力する過程を1つ1つ丁寧に褒める。
  • 何もしていない時でも存在そのものを褒める。
  • 子供のSOSは、「分からないから困っている」という思いから端を発していた。
  • 自分の自信のなさで、課題学習から逃れようとするが、一緒に寄り添うことで超えていける。

自信のついた重度発達障害の梅子さん

その後、🌸桜🌸さんが梅子さんに対して向き合い方を変えてどうなりましたか?

🌸桜🌸
🌸桜🌸

時間を追うごとに梅子さんが変わっていきました。でも、梅子さんが変わった訳ではありません。私が変わっただけでした。

梅子さんは、思春期に入ってからは、0ではありませんが、大泣きの問題行動もすごく少なくなりました。

いつも自信満々になり、新しい課題も少しずつ積極的に頑張ってくれました。

「自分にはできる!」

梅子さんに自信をってもらう事で重度発達障害があったとしても、堂々と生きていけるのだと知りました。

梅子さんのセルフ・エスティームを高める…その基礎は、課題学習の中で努力を褒めてやり出来ないと思って落ち込んだら励ましてやり、その時、今まで以上のものにしよう!と伝えて、療育者と共に高みを目指していく事なんだと思います。

決して取り組みなしでは、セルフ・エスティームを高めてやることは出来ません。

療育者には、子供と共に生きるという決意が必要ですが、決して、辛いことだけではないので、希望を持って欲しいなと思います。

そして、梅子さんが変わった原因は、私が変わったと言うことでした。

私が梅子さんの立場に立って物事を考えられる力(客観視)と知識と知恵を得たからでした。

梅子さんの立場に立つことは、すごく簡単なようで非常に難しいのですが、観察と記録の日々から梅子さんを知ることができるようになったので、理解と共感が生まれました。

観察や記録については「【家庭療育】重度発達障害児の問題行動の記録方法の解説」をご参考にしていただけたらと思います。

共感を親から得られることほど、子供にとって心強いものはありません。

無知なる愛ではなく、知識ある愛を持って教育していくことで、梅子さんは怯えることなく安心できるようになったのだと思いました。

  • 重度発達障害児に自信がつくと、新しいことも分からないことも積極的に取り組むようになる。
  • 重度発達障害児に自信がつくと、SOSからの問題行動は消滅する。
  • 親の自分が知識を持って子供の立場に立って考えられる力がつくと、重度発達障害児でもすぐに変わる。
  • 無知なる愛ではなく、知識ある愛こそ、適切な教育を施すことができる。

では!🌸桜🌸

成人になった重度発達障害者の梅子さんと一緒に課題学習を通して、心を育てる療育を実践してきた。ヘレンケラーとサリバン先生のような指示の通る関係の構築に尽力してきた。療育は、新居浜にあるトモ二療育センターで9年間勉強。現在、梅子さんは、地元の通所施設で毎日働いている。

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